2016年度入社
専攻/工学部 電気工学科
車載製品の設計・開発および技術支援が私の仕事です。特に深く関わっている製品は2つあります。1つは『防護無線自動発報装置』。これは、車両の脱線・転覆・衝突を検知し、防護無線(非常時に併発事故を防ぐため、付近を走行する列車に停止命令を伝える無線装置)の発報と乗務員への通報を自動的に行う装置。事故によって乗務員が意識を喪失したり、平静を失った状況でも防護無線を自動的に発報することにより、迅速・確実な列車防護を可能にして併発事故を防止します。搭載されるのはJR東日本の車両で、私は車両に応じた装置の企画・設計から、走行試験時のデータ収集と解析・報告、納入後のフォローまで、全工程に携わっています。そしてもう1つが『AirLead』(鉄道車両用遠隔操作型ボールコック)。これは離れた場所からでも空気配管のコックを操作できる装置で、ホームドアが設置されていても、駅ホームから車両の下にあるボールコックを自由に開閉することが可能になります。この装置に関しては、お客さまのヒアリングと詳細設計、技術支援(取り付け、操作方法の説明)が主な業務です。
設計・開発した製品をさまざまなお客さまへお届けできることにやりがいを感じています。J-TRECの主力製品はステンレス車両の『sustina』に代表される鉄道車両ですが、近年は『防護無線自動発報装置』や『AirLead』をはじめとする車載製品そのものの設計・開発を依頼していただくお客さまも増えています。面白いのはその用途が1つではないこと。開発依頼をいただいた理由をうかがって「そういう使い方をされるのか」と驚くこともあります。こうしたケースでは異なる環境での動作や安全性の確保を慎重に検討する必要がありますが、前例のない開発に臨むのは技術者の楽しみのひとつ。いいものをつくってお客さまの喜ぶ顔が見たいという気持ちで仕事に取り組んでいます。
これまで取引がなかった西日本エリアの鉄道事業者さまから『防護無線自動発報装置』の導入に関する相談と開発依頼を受けたことです。首都圏の主要路線の車両に搭載していることを知ってお声がけいただいたのですが、その目的は意外なものでした。お客さまは将来的なワンマン運行を見据えて装置の導入を検討されていたのです。私は乗務員が意識を失っても自動的に異常を検知して発報・通報を行う装置を応用してワンマン運行を目指すという発想に共感して「ぜひやらせてください」とお答えしました。困難だったのは、前例のない用途にも関わらずお客さまの要求レベルが高く、走行試験で今までにない容量のデータを収集しなければならなかったことです。解析作業にも多くの時間を費やしましたが、先輩たちのサポートのおかげで製品の性能を実証できました。報告書を提出したとき、頼りにされていると実感できたのもうれしかったですね。納入はこれからですが、当社の『防護無線自動発報装置』を活用したワンマン運行の実現が、西日本で車両製造を受注するきっかけになればと思っています。
当面の目標は設計・開発できる車載製品を増やし、業務の幅を拡げること。車両の脱線を検知する『Train Saver+』(トレインセーバープラス)、車内で運行情報やニュース、天気予報のコンテンツを配信する『Train Viewer+』(トレインビューワープラス)など、先輩たちが担当している製品についても理解を深め、設計から納入まで一貫して担当できるようになりたいです。また、これから先は、高齢化や人口減少をはじめとする社会環境の変化に伴う新しいニーズに応えていくことが求められると思うので、JR東日本グループのスケールメリットを生かして鉄道事業者やグループ企業へ出向して視野を広げていければと思います。