2016年度入社
専攻/工学部 電気工学科
車両の走行・停止にかかわる装置、照明装置や空調機器など、車両全体のシステムの設計を担当しています。具体的な業務は、車載部品(空気系・電気系)の仕様策定、車載部品の接続・構成を示す『ツナギ図』の作成、部品を接続するための車両全体の配線図の作成、という3つです。鉄道事業者さまの要求に基づく機器・装置の仕様を策定し、車両として成立させるための構成やインターフェイスを装置メーカーと検討し、当社のシステム設計チームが設計する、という流れになります。配属当初は国内の通勤車両を担当。現在はフィリピンのマニラ地下鉄向け鉄道車両のシステム設計を進めています。国内案件との違いは、ドキュメントでのやりとりが圧倒的に多いこと。すべて英文でページ数も多いので、翻訳ソフトなどを活用して作業を効率化しています。もう間もなく仕様策定の最終フェーズに移りますので、今後は英語での交渉や打ち合わせ、性能試験に立ち会う機会も出てくると思います。工学部なので会話力には自信がありませんが、スキルアップできる機会なので前向きにトライします。
1つは要求・要望に対する最適な答えを見つけられたとき。その手段は本当にさまざま。いただいた仕様書から安心・安全に対するお客さまの想いを汲み取る。過去の実績を紐解いてその車両が開発された背景を理解する。先輩たちがいかにして不可能を可能にしてきたのかを学ぶ。装置・機器のメーカーのノウハウを知る。シンポジウムなどに参加して最新のトレンドを把握する。私はそうした取り組みを通じて最適な仕様や回路を検討することに面白さを感じます。もう1つは、自分が設計を担当した車両が完成に近づいていく過程を追うこと。横浜事業所は設計部門と製造部門が同じ敷地内にあるので、いつでも工場で進捗を確認できます。そこには製造工程で見つかった課題に対して迅速に対応できるという利点もあり、ものづくりに関わるすべての社員が自らの仕事に対する責任とやりがいを感じられる環境と言えますね。
製造現場で車両製造に携わっていたとき、その車両に乗車された方に感謝されたことです。車両は、主に東京の新宿と長野県の松本間を運行する特急列車『あずさ』。お客さまは長野県のホテルにお勤めの方。新型車両の納入のため、J-TRECの担当者が代わる代わる宿泊していたとき「どんなお仕事をされているのですか?」とお声がけいただきました。そこで鉄道車両に関わる仕事をしていることを伝えると、その方は新型車両を利用された方で「東京へ出るときはいつも利用しています。新しい『あずさ』は乗り心地がよくて快適ですね」と言っていただいたのです。この言葉で私は、自分が多くの人々の日常を支えていることを実感し、誇らしい気持ちになりました。同時に大きな責任も感じたので、今でも仕事で迷ったとき、選択が難しい課題に直面したときは当時を思い出して原点回帰しています。
シンプルで扱いやすい車両の設計を目指していきたいです。なぜなら、車両をとりまくすべての関係者にとってたくさんのメリットがあるからです。シンプルな設計をすれば、工数とコストが削減でき、作業の安全性が向上し、調達が容易な部品・部材を使えます。また、扱いやすさは運用後の保守・メンテナンスの時間短縮につながります。車両を利用されるお客さまに安心・安全を提供するためにも大切なことだと思います。もちろん、現在の車両設計が複雑すぎると言っているわけではありません。お客さまの要求に応えるためにベストを尽くした結果「もう少しシンプルな構造にできたのでは」と考えることがある、ということです。しかし、そのわずかな疑問を放置しては成長はありません。日本の車両製造技術は高度かつ先進的で、さまざまな創意工夫を重ねて今の構造にたどりついているので、変えるのは簡単ではありませんが、根拠を示して議論を重ね、より良い車両を追求していきたいですね。